*カミキレ* | おそらのうえで。

カミキレ

　一枚のカミキレ。

　こんなカミキレ一枚出すだけで

　私たちの何が変わる？

　*カミキレ*

　｢何が変わる？｣

　そう問い掛けた私に

　｢夫婦になれんじゃん｣

　さも当然なように答える君。

　｢夫婦になったら･･何がかわる？｣

　　
　でも　しっくりこなくって

　また問い返したんだ。

　親公認の同棲を始めて２年半。

　“そろそろこういうのも考えたら？”

　
　そう言って今日の朝

　うちの母が持ってきた。

　　
　夫婦になったって

　今の生活と何かかわる？

　
　｢君の名字は変わるね｣

　君が思い出したかのように言った。

　｢それだけ？｣

　まだまだ続く私の問い掛けに

　君は頭を悩ませた。

　二人で机の上のカミキレを覗きながら

　自分の中での

　カミキレの重要性を探ってた。

　｢家族、作れるじゃん｣

　悩みだして約１０分。

　君は嬉しそうに微笑んで

　そう言った。

　｢俺が仕事終わらせて帰ったら
　　　子供が“パパおかえり”って出迎えんの。
　　台所では君がご飯作ってて
　　　　俺は子供を抱きかかえて
　　　君にただいまのキスをする｣

　楽しそうに

　嬉しそうに

　君は言葉を続けた。

　
　私の中にふくらんでくる

　君と私と

　私たちの子供がいる

　私たちの家族。

　｢どう？｣

　そう問い掛ける君に

　｢うん。悪くないかも｣

　そう言って

　私は右手にペンを握った。

　ずっと一緒にいたけど

　考えたことなかったんだ。

　家族つくるなんて。

　｢幸せになろうよ｣

　全てを書き終えた私に

　君はそういって微笑んだ。

　｢幸せにしてよね｣

　　
　ねぇ

　二人で幸せになろうね。

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